超訳「国富論」―― 経済学の原点を2時間で理解する
超訳「国富論」―――経済学の原点を2時間で理解する
2018 大村大次郎
雑なあらすじ
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雑な感想
現在慶應通信で経済学部に所属しているにも関わらず、僕は国富論を読んだことは無い。所詮先人たちの手垢に塗れた、後付けの学問たる経済学の基礎を作り上げた言い訳の本なのだろうと勝手に思っていたから。ところがこの本を読んで国富論そのものに興味が出てきた、というのが感想。その理由としては「この本の書き方の術中に落ちた」というべきかもしれないが、ただひたすらに、「アダム・スミスは予兆していた」、「現代に合わせて考えても全く破綻していない理論だった」*1とアダム・スミスを称賛しながら国富論から抜粋したエッセンスが解説されていき、場合によっては現代の政治や経済に紐づけながらうまいこと話が進んでいく、「痛快さ」というあたりだろうか。また、サブタイトルの「経済学の原点を2時間で理解する」とあるように、サクッと読めるのも導入書籍としては素敵。
気になった言葉
「神の見えざる手」の真実
人は自己の利益のために最大限の研究と努力をする。
それが結果的に神の見えざる手に導かれて、いつの間にか社会の利益に貢献している。 (国富論第4篇第2章)
この文章だけを読むと「結局神の見えざる手は放置プレイ、強欲資本主義の免罪符にしかならないじゃなか」というような印象を受ける。しかし実はこのフレーズは「独占貿易」「輸入規制」への批判がテーマとなっている部分で触れられた言葉であり、この言葉を通じて「独占貿易や輸入規制は決して国の為、社会の為にはなっていない」「輸入規制によって本当は外国から安く買えるものを高い費用をかけて国内生産している」「独占貿易と輸入規制を廃し、自由な取引をさせた方が結果的には国の為になる」ということを述べている、とのこと。そして暴走したこの言葉の知名度は、あくまでも国富論のテーマではなかった、ということが合わせて書かれている。この言葉を言い訳に労働者の賃金を下げている経営者はお腹痛くなれ。
奴隷は高くつく
奴隷たちは、なるべく働かず、なるべく多く食べようとするため、結果的にコストは高くつく。奴隷による農業が成功しているのは、「砂糖」「タバコ」など高収益の農作物だけである。(国富論第3篇第2章)
このあたりを読むと、国富論の前提となっている「性善説」のようなものに強く考えさせられる。低賃金で不当にこき使うより、まっとうな賃金を支払ったほうが優秀な人材が定着する、でもまっとうな賃金を支払うと会社が立ち行かないので、現代日本で「ブラック企業」と呼ばれる搾取や、政府主導でしか上がらない賃金*2などなど。それが出来りゃあ苦労はないわ!と、全方位から怒られそうなないものねだりかもしれないけどもw
まとめ
とにかく、「あぁ、国富論を誤解していたような気がする」という印象を受けた。無論、「超訳」とある訳で、ある程度恣意的な書き方故とは思うけども。ここから国富論を読むのはまだハードルが高いかな。でもなんか興味が沸いたなー。ただ少し、ほんの少しだけ残念だったのは著者の方が国税局出身だからなのか、税金絡みの話題がやけに粘っこかったこと。いや当然ながら「税」というものがそれだけ大事なのは認識しているけど、やけに粘っこいんだよな、表現が。
- 作者: 大村大次郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/01/18
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