酒とタバコと串カツと『全面禁煙の串カツ田中、想定外の来客2%増 売上高は減』
拾い読み。
串カツ田中さんが全面禁煙を開始し、どうなったか…という内容の記事。表題で概要がスパッ!と理解出来るのは素晴らしいと思う。会社が経費で取っている日経新聞くらいしか僕は読まないけれど、新聞というメディアの「表題で惹きつけ、最初の数行で概要を簡潔に説明」というスタイルは素晴らしいと思う。この時代に紙媒体とか、軽減税率を適用してくれ!とかそういう業界的な主張は流石にどうかとは思うが。
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概要整理
- 6月から全席禁煙を開始
- 来客数は2.2%増加した。
- 売上高は2.9%減少した。
- 会社員や男性グループが減少した。
- 家族連れが増加した。
とのこと。ビジネスの成功、失敗を単純にこの時点かつ、この情報「だけ」で判定するのであれば失敗であろう。KPI(この記事であればKGI的な位置づけだが)たる売上高が減少しているのだから。
客数が増えているのに売上高が減るということ
一般的な小売業を経験されている方なら「なるほど」な訳だが、この減少を説明するには売上高の成り立ち方から考えておかねばならない。ビジネスにおける売上高は全て、下の方程式で成立している。
売上高 = 客数 × 客単価 …①
もうびっくりするくらいこれだけである。E=mc2やらma=Fも真っ青のシンプルさ。この記事であれば、客数が2.2%増加している訳で、それを①の式に当て込むと
売上高 = 客数(102.2%) × 客単価 …②
となる。その後、売上高2.9%減少という数値を②に入れ込むと…
売上高(97.1%) = 客数(102.2%) × 客単価 …③
という形。これで方程式の両辺で不明なものは客単価のみ、それ以外は数値で表されたので客単価を逆算することが出来る。両辺を客数(102.2%)で除算し、右辺を客単価のみにすると、
売上高(97.1%) ÷ 客数(102.2%) = 客単価 …④
つまり、④の方程式を計算すると客単価は95.0%となる。なんと客単価が5%も減少しているということになる。なかなかのインパクト。1,000円で売れていたものが950円でしか売れないのである。これが客数が増えているにも関わらず売上高が減少するという事案の正体。
客単価減少の原因は
全面禁煙に踏み切った結果、売上高の減少が観測された。その観測された減少をブレイクダウンしていくと、「客単価の減少」が要因であるとなった。では客単価が減少した要因は何なのか。記事を読んでいくと…
- 子供を連れてこられる
- 酒が飲める場で、たばこが吸えないのはありえない
- 働く上で快適
- 回転率が上がった
- 喫煙の常連客が来なくなり残念
このあたりの記載が。「1」の子供を連れてこられる、というのは客数増加要因ではあるが、子供は大人ほどの量を(基本的には)食べない。ということでこれは客単価減少の要因となり得る。続いて「2」の酒が飲める場で〜…というのも、喫煙者にとって見れば落ち着いて紫煙をくゆらせることが出来ないのはマイナスで、タバコを吸う為に店を早く出たり、そもそも選ばないという可能性が存在する。ということは、客数減少、客単価減少の両方に影響がありそうだ。「3」に関しては従業員側の素直な気持ちであろう。ES(従業員満足度:Employee Satisfaction)があり、初めてCS(消費者満足度:Customer Satisfaction)につながる訳なので、将来的にはきっと客数、客単価の上昇に影響がありそうだ。つまり今回の事案の議論対象外。「4」に関しては暗に滞在時間の減少に言及していることになる。一般的に滞在時間が短ければ使うお金も少ないと想定される為、これは客単価の減少に一役買っていそうだ。「5」に関してはどれくらいの頻度で来店し、どれくらいの金額を使うのか全くわからないが、客数、客単価双方に対してマイナスの影響が出るのであろう。
まとめ
この記事でも触れているが、売上の減少はおそらく一過性であろう。家族連れへの支持が得られれば客数は順調に回復していくだろうし、CSが上昇するのであれば長期的にはESも上昇し、客数の上昇に寄与するであろう。(教科書通りなら)客単価の向上施策だけは別で考える必要があるだろうが、客数あっての客単価である。この串カツ田中の記事を読み終えて、こういう大きな影響が出そうな判断をズバッと下し、その結果を冷静に受け止めて先を見ることができるという器の大きさ、やっぱり商売上手だなぁと思った。
後日追記 鳥貴族関連も同じような議論が。